発電式自転車テールライト


はじめに

以前の自転車ネタから 10 年以上経過しました. 本文執筆時点ではもう時折しか自転車に乗らなくなりました. しかもママチャリです. 歳を取りました. 一応, 暗くなってから帰路に向かうときがあるので, 照明部分は奮発しハブダイナモの自転車に乗っています.

妻子持ちの身, できるだけ安全にと後方にも赤色 LED が点滅する テールライトをつけています. しかし市販品には幾つか不満があります.

実は一時期, ブリヂストンの太陽電池式の奴 (SLR100) を使っていたことも ありました. こいつは上記問題が解決されていて気に入っていたのですが, 転居に伴い日のあたる場所に駐輪しなくなったため使い物にならなくなりました (その他, 振動センサの反応が悪くなかなか点滅モードに入ってくれないという 欠点もありましたし…).

ハブダイナモですから, 電源は豊富にあります. それを使って LED を点滅されれば, 上記のような問題は解決されるはずです. 以前からこういったアイデアは持っていたのですが, 効率とかいろいろ考えると 回路規模が大きくなる気がして何もしてませんでした. ところが先日「何か面白い石はないかな」と 秋月電子の WEB ページを散策していると いろいろ面白そうな石が見つかり, 結構シンプルに出来るのではないかと 思い, 試しに作ってみることにしました.

回路

設計方針は以下のようにしました.

  1. 貴重な人力をできるだけ無駄にしないため, 定常状態に入った時の エネルギ効率を重視する (安易にレギュレータ等を使って熱と化さない)
  2. 信号等で止まっても 1 分くらいは点灯を続けるよう充電機能を持たせる
  3. 照度センサをつかって, 暗い時だけ動作という機能は, 理想かもしれないが 面倒な割に効果が低そうなので装備しない
  4. もしかして 3. の機能は, 前照灯内にある照度センサを活用することで 実現できるかもしれないが, 汎用性がないのでその方針は採用しない

こういった方針に基づいて作った回路が以下です. ダイナモから来る交流を半波整流して直流化し, 一旦 1.25V に落としてキャパシタで蓄えた後, 3.3V に昇圧して LED を点滅させています. 降圧させたのは自転車を押していても (ダイナモが発電する電圧が低くても) 動作できるため, それを昇圧させているのは停車しても (給電されずコンデンサの両端電圧が下がっても) しばらく動作させるためです.

部品表は以下の通りです.

U1 NJM2360AD DCDC (1.25V へ降圧用)
U2 HT7733A DCDC (3.3V へ昇圧用)
U3 M34-2L LED 点滅用 (2Hz)
D1 1S1588 整流用 (昔まとめ買いした物. 今なら 1N4148 とか)
D2 1S4 ショットキーバリア
D3 1S4 ショットキーバリア
D4 LED 赤 高輝度タイプ
L1 220uH なるべく直流抵抗の少ないもの
L2 100uH なるべく直流抵抗の少ないもの
R1 0.22Ω 1W 品 (無くてもいいかも)
R2 1KΩ 配線の都合上付けただけ, 無くてもいいと思う
R3 100Ω U3 のデータシートを見る限り必要なさそうだが, 実は要った
C1 100uF 電解 50V
C2 100pF 手元になかったので 100pF にしたが, U1 のデータシートでは 470pF
C3 47uF 電解 6.3V
C4 4.7F 電気二重層 2.5V
C5 0.1uF 積層セラミック
C6 47uF 電解 6.3V (1500uF に変更: 追記 2 参照)

組み立て, 動作確認

上記回路を単 4 二本タイプのテールライトに詰め込みます. 単 4 の直径は 10mm ちょいなので, C4 のスーパキャパシタは φ10 を使うと収まりがよくなります.

肝心の動作時間ですが,

  1. D4 点灯時に流す電流を 30mA として 1 分間点滅, デューティ 0.5 なら 30秒点灯なので, 30mA x 30sec = 0.9C の電力量が必要.
  2. 1. の 0.9C を C4 がまかなうとして, 昇圧回路の効率を 80% と過程すると, C4 に 0.9/0.8 = 1.125C の電力量が必要
  3. U2 は実質 1.25〜0.25V の時動作するとすると 1.125C/1 = 1.125F あればよい. まぁ 1F でいいか.
と計算しました. ただし製作当時, 秋月や千石の 通販で扱っている 2.5V 系の電気二重層 (5V 系は大きくなるため)で, 一番容量が小さいものは 4.7F でした. 「点灯時間 5 分弱に延びるけど, まぁいいかな」と軽い気持ちで 変更しました.

しかし, 実際作ってコンデンサに 1.25V フル充電させて観察してみると 点滅時間は 20 分近くあります. どっかで計算ミスったのかと思いますが, 良くわかりません(*1). いずれにせよ, 駐輪場に戻してから 20 分近くも点滅されると, 他の人から「スイッチ消し忘れている. 電池が勿体無いな」と 思われるかもしれません.

追記
(*1) 後日 M34-2L のデータシートを良く見るとデューティは 1/8 と書かれてました. デューティ 0.5 に比べ, 消費電力 1/4, 動作時間 4 倍となるから 5 分の 4 倍で 20 分, と考えればなんとなくあってるっぽいです.
1/10 の 0.47F を使うとか, 0.1F(5V) を 3V まで充電するとかだと丁度良いのかも しれません (*2).

ここで 1.25V フル充電すると, 停車後 20分も意味無くピカピカ光っているわけで, せっかく貯めた人力エネルギが勿体無い気もします. いったいどのくらいのエネルギを無駄にしているのか計算してみると… E-QV^2/2 ですから 4.7F*1.25V*1.25V/2=3.67J となります. これは質量 10kg の自転車を 3.7cm 程持ち上げた程度のエネルギです. まぁほとんど気になるほどのことではないですね.

追記2
(*2)実は上記 1〜3 は悩みました. 「電圧に関係なくコンデンサが出す電流が大事だから」と最後の最後に 1V で割った のですが, 昇圧した分コンデンサが流す電流は 30mA より大きいはずです. こういった観点に立つと LED 点滅時間 (t) に関する式を作ると以下のようになります.
ここで, C はコンデンサの容量 (4.7F), V は終了電圧 (0.25V), V0 は開始電圧 (1.25V), K は DCDC の効率 (80%), Vl, Il は led に流す電圧と電流 (3.3V, 30mA), D はデューティ (1/8) です, これらの数値を代入して t を求めると… 352 秒, 6 分弱となります. 実測値 (20 分) と全然違います. そのため, こちらの方針はどこか間違っているんだろうと思っていたのですが, 先の方針はあちこちにほころびが目立ちます. すなわち, 回路が理論通り動いてないかと疑ってきました.
一番考えられるのは U2 の昇圧周りの能力が低く, C4 周りの電圧が下がるに従い, C6 を 3.3V にキープできない (LED が点灯するとすぐ下がる) ことが考えられます. これを確認するには, C6 にかかる電圧をオシロで観察すること, 解決するには C6 の容量を増やすこと (まぁ根本的解決ではないかもしれませんが, ある程度の改善は期待できます) かと思います. しかし, わざわざ自転車から取り外して確認するのも面倒なので, そういうことにしているだけです.

配線・取り付け

本製作を通して, 実は一番苦労した部分は自転車に取り付けて, 前輪のハブダイナモから配線を回すことです. 全然美しくなくて恥ずかしいので写真は載せません.

昔, 「ランドナー」というタイプの自転車がありました. このタイプの自転車はなぜか後輪にダイナモが付いてます. そのため前輪の泥除けの先にあるヘッドライトまで電線を引き回す必要があります. 一部高級車はパイプの中に電線を入れてました. そういったことをすれば美しくなるんでしょうが, 技術力が伴いません.


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